SCENE8 業務改善のポイントは!? 心構え→問題抽出→プロセスのみえる化!

 診療報酬改定と共に増える書類、社会のニーズにより増える確認事項、医療の高度化による薬剤の増加など病棟の稼働を増やすための混合病棟化は、看護業務の煩雑化と共にリスクが増える状況となっている。一方で、看護師数が増えるわけでもなく、一人ひとりの要求される知識と業務は増えるばかりである。当然、そんな状況では、教育も難しく、新人がドロップアウトする確率も高くなっている。この現状を打破するためには、どうすればいいのか考えなければならない。解決する一番の手法は、業務改善であろう。

 奈須は、病棟業務の煩雑さがインシデントを引き起こしていると思っている。スタッフの職場の満足度も業務が改善されれば変わってくるだろう。記入しなければならない書式が多い現在では、業務改善による効果的な業務執行と業務内容の簡略化が急務である。奈須は、業務改善のポイントについて根田師長に相談することになっていた。根田師長の病棟のムンテラ室で、30分ほど相談に乗ってもらった。

奈須:今日は、師長として知っておくべき業務改善のポイントについて教えてください。

根田:奈須さんのやる気は私も見習わないとね。さて、今日は師長して行うべき業務改善のポイントよね。ポイントは、まず心構えからよ。日々、業務改善がしたいと思う心と、既存の業務フローが正しいのかどうかを自問自答することよ。また、既存の業務の本質について考える必要もあるわ。業務に慣れてしまうと、漫然と業務を行うようになり、なぜその業務が行われているのかわからなくなるのよ。

奈須:確かにそうですね。漫然と行っている業務もあって、確かにそういう業務って不満がでやすいですね。業務の本質を理解するということは、自発的に業務を行うこともできるようになるってことですね。

根田:そのとおりよ。人間って本質を理解していると自発的に、効果的で効率的な行動ができるものなの。

奈須:そう考えると私も本質を理解せず漫然と行っていた業務もあります。反省点ですね。

根田:普通は、そんなものよ。最初からこの業務って、なぜ存在してどうあるべきか、といったことは考えないと思うわよ。私も、業務について考えられるようになるまで3年かかったわよ。

―業務改善について、姿勢が重要であることを理解した奈須は、さらに根田師長に質問をした。

奈須:根田師長、考え方だけでなく問題を見つけたり、改善案を見つけられたりするようなツールってありますか?

根田:ツールといえば、特性要因図かなぁ。

奈須:特性要因図って何ですか?

根田:特性要因図(図10)とは、フィッシュボーンダイヤグラムとも言われているの。業務改善を行うにあたり、問題点を抽出するのに便利なツールよ。特性要因図は、解決しなければならない課題を原因である要因に分類するの。その要因別に柱を立て、さらに原因となる要因を細分化していくことで、課題をどんどん深掘りできるのが特性要因図のよいところなの。例として、「転記を減らすという課題」から特性要因図の例(図11)というのを作って見たわ。転機を減らすためには、人と物、連携、業務ということが要因と考えられるの。要因として、「物」について考えると、IT化の遅れと書類ということに気づく、さらに、書類のことを考えると書類が複写になっていないといったことが分かる。こうやって、深掘りしていくと書類は、複写にすれば転記を減らすことができるかもしれないってことがわかるわよね。

奈須:なるほど、頭で考えてもわからないことが、特性要因図を利用することで整理され、より深い問題が抽出されるのですね。

根田:あとは、プロセスで業務を見ることかな。

奈須:プロセスって何ですか?

根田:業務の順番の様なものね。業務フローを作って見るとわかりやすいわよ。業務改善は、業務フローを並べ替えたりすると業務効率がよくなるわね。実は、奈須さんも一部の業務をプロセス管理しているのよ。

奈須:それってなんですか?

根田:クリティカルパス(CP)よ。

奈須:パスってプロセス管理なんですね。患者のための業務管理表と思っていました。

根田:パスは、業務管理表としての性格もあるけど、業務プロセスの改善にも役に立つのよ。CP委員会からCPが変わったといった伝達が来るでしょ。これって、治療の業務改善の結果なのよ。

奈須:そうすると日々の業務を工程管理するように表にすればいいんですね。

根田:できれば、表ではなく流れ図にするとわかりやすいと思うわよ。例えば、プロセス改善の例(図12)として、うちの病院の点滴の指示から実施されるまでのプロセスとオーダリングシステム導入後プロセスを書いて見たの。そうすると、以前は、医師から点滴の指示が来ると看護師が指示受けをして、その後、薬局に伝達するといった構造になっていたわね。それが、オーダリングシステムを導入したことにより、看護師が薬剤部に伝達する必要がなくなったよね。これって、安全面と看護師の業務の面からすると、すごく良くなっているよね。既存の業務プロセスを書き出すことにより、改善できることも見えてくることもあるの。

奈須:確かに、業務を見えるようにすると改善しやすいですね。

根田:これって、業務プロセスの可視化というのよ。可視化とは、見える化ね。

奈須:それでは、改善に対する心構えと特性要因図、業務プロセスの可視化で、業務改善を頑張ります。

 業務が繁雑化している現場において、より安全で、より効率的な業務システムを構築するためには、業務改善が一番の近道であることは間違いありません。